Interview with
Daisuke Obana(N.HOOLYWOOD)

20年超という長きに渡って共鳴を続けてきたラングラーとN.ハリウッド。誰もが認めるタッグがこの春リリースするのは、デザイナー尾花大輔さんの私物を極限まで精巧に模したデニムのセットアップだ。両者がこれまで重ねてきたコラボレーションとはアプローチの異なる今回のプロダクツについて、尾花さん自らがその制作背景や胸中を語る。

Photo:Daisuke Taniguchi
Text:Takashi Fukae

まず最初に、尾花さんにとってのデニムウエアの魅力を教えてください。

まず、デニムウエア全般という意味で言うと、だれもがパッと思い浮かべることが出来る"デニムらしさ"というのが魅力じゃないかと思います。"デニム"と聞いて、一人一人が思い浮かべるものって、多少の違いこそあれど、どれもかなり似たような姿だと思うんです。そんな、"デニムっぽさ"という感覚までもを誰とで共感できる、というのは大きいのかなと思います。だから、作り手としての視点で言えば、パッと一目見るだけで誰もがデニムだと分かるようなものを作らないとダメだと思っています。その"らしさ"というのは、例えば独特の色落ち感や質感なんだろうなと。そこが抜け落ちてしまっていたら、そのアイテムはデニムで作る意味がないんじゃないかなって思っています。

では、ラングラーのデニムの魅力はどんな部分でしょうか?

ラングラーのデニムの魅力は、まずやっぱり代名詞でもあるブロークンデニムの色落ち感ですよね。あの独特の綺麗な色落ちはラングラーにしか出せない美しさだと思います。ブーツカットジーンズの美しいフォルムもこのブランドならではですね。ワークウエアなのに、どこかセクシーでエレガントな雰囲気も持ち合わせるというのは、他のデニムブランドにはない個性だと思います。そして、そんな独自のファッション性を昔から貫いているにも関わらず、古くからコラボレーションを実践していたチャレンジングなブランドでもある。だからこそ、長年ずっと変わらず愛されるモデルがある一方で、その時代ごとに個性的なアイテムも多く存在するって点にも惹かれるんだと思います。

N.HOOLYWOODとラングラーは20年以上に渡って何度も協業していますが、その理由は?

単純な話で、ラングラーさんと作りたいものがあるから協業している、というのが全てです。それは、2002年に初めて一緒に物作りをしたときから何も変わっていないですね。だから、長い期間たくさんのアイテムを一緒に作らせてもらっているのですが、"毎シーズン恒例だから......"というような理由で制作した事は一度もないんです。毎回必ず"これを一緒に形にしたい"という気持ちが出発点になっているので、僕がラングラーと何度も一緒に服を作ってきたってことは、その数だけ作りたいものがあったという事なんです。

今回のコラボレーションは尾花さんの私物の再現、という今までとは少し毛色の異なるアプローチですが、それには何か理由があるのでしょうか?

僕は元々、自分が手掛ける物作りにおいては、"古着をそのままを再現する"という事に否定的な意識だったんです。"古着屋あがりの人間が古着っぽいものを作る"って面白くないし、自分でデザイナーを選んだのだから、しっかりデザインをしようという意識があったので。ただ、服作りを始めてからある程度の時間が経ち、自分の意識もブランドとしての立ち位置なども徐々に変化してきて、僕が魅力的に感じたヴィンテージの深みや奥行きみたいなものを、皆さんにも共感してもらえるようにはなったかな、と思うようになったんです。今回の僕の私服を再現するというのは、そんなヴィンテージの魅力の共感を目指すという意味では、一番自然な形なんじゃないかと思います。

ヴィンテージの再現をするにあたり、このジャケットとジーンズの品番をセレクトした理由を教えてください。

実を言うと、今回作った「126MJ」というジャケットは、僕が高校生の頃に町田のアメカジショップ的な店で初めて手に入れたラングラーと同じ品番なんです。そんな事もあって、23年前に自分のブランドを始めた時にリメイクで使っていたのもこの「126MJ」でした。その後も、自分の経歴の要所要所でこのジャケットが出てくるような、ラングラーの中でも特に思い入れのあるモデルの一つなんです。高校時代に初めて手にしたこの品番は、歳を重ねて他のデニムジャケットも多数着てきた今でも、やっぱり自分のフィーリングに馴染んでいるという感覚がありました。ただ、時が経つにつれて、だんだん自分の体型は変化してきて、身体がデカくなったりもして。そんな時期にネットで見つけたのが、今回の元ネタになったビッグサイズ(Size50)の「126MJ」なんです。それが今から三年前くらいの事で、買ってからはそれこそ毎日のように着倒していました。それで、僕が感じたこの特大サイズ特有の面白味を共有したいと思って、ラングラーのチームに商品化を提案しました。

ビッグサイズの「126MJ」特有の魅力とは具体的にどういったところでしょうか?

ラングラーに限らずですが、デニムジャケットって割とベースの作りが小さいじゃないですか? でも、それこそ本場のアメリカなんて身体がデカい人が多いから、当然大きなサイズでも制作する。で、ここまで大きなサイズになってくると、やっぱり色んなディテールがおかしなことになっていくんですよね。例えば、首周りの寸法も大きい人の太い首に合わせてサイズアップするんだけど、そうすると前身頃が下がってバランスが悪くなるから、帳尻を合わせるように襟のサイズが異常に大きくなっているんですよ。極端に大きなサイズにする事でどこかの計算が僅かに狂ってしまって、でもその辻褄をどこかで合わせざるを得ないから、襟の型紙に手を加えないといけなかったんだろうな......と。とは言え全てのパーツに手を入れるのは大変だから、ポケットは小さいままになっていたり。そういったアンバランスなディテールが積もり積もって、同じ品番でも一般的なサイズのものとは別物ってぐらいに、個性的デザインになっている。そんな、ある種の"可笑しさ"みたいな部分こそが、この一着の面白味であり個性的な魅力だと思います。

今回、同時にジーンズ「936 SLIM FIT」もリリースされますが、そちらはどういった経緯で制作されたのでしょうか?

ジーンズ「936 SLIM FIT」の方は、この馬鹿デカい「126MJ」をセットアップで着るために探した一本が元ネタになっています。ジャケットと合わせた時の違和感のない色落ち具合を重視して探したものなので、年代も品番も全く意識しないで探し出したものなんです。それって所謂ヴィンテージマニア的な視点を完全に無視した選び方だとは思うんですが、ファッション感覚を重要視したセレクトっていうのは自分らしいのかな、とも思います。なので、今回のコラボレーションは是非ともセットアップで楽しんでもらいたいですね。

ズバリ、今回制作したウエアの出来栄えはいかがですか?

今回は、デニムの経年変化なども含めて元ネタを再現するという特殊な物作りだったので、ラングラーチームの皆さんはこれまで以上に大変だったと思うのですが、すごく良い出来になったと思います。何より嬉しいのは、僕が一番伝えたかったヴィンテージの魅力がしっかり入っているというところ。"ヴィンテージの模倣に徹する"という意図で制作を始めて、その結果限りなく同じものが出来上がりました。ただ、元ネタを知っている僕が見ると、ほんの僅かにだけ"作ったんだな"というリプロダクト感が見て取れる。そんなところも実は気に入っている部分だったりします。あまりにも完璧に本物に近づけてしまうと、オリジナルそのものの魅力が薄くなってしまうような気がしちゃうので。「ここがオリジナルとちょっとだけ違うんだよね」っていう部分が残っている方が嬉しかったりするんです。そんなニッチな楽しみ方はさて置き、僕が実際に着てみて感じたこのセットアップの確固たる個性とその魅力を、多くの人に味わってもらえたら嬉しい限りです。

Daisuke Obana尾花大輔

学生時代からヴィンテージウエアに傾倒し、ヴィンテージショップのマネージャーやバイヤーとして経験を積んだ後、2001年に自身のブランドN.HOOLYWOODを設立。ヴィンテージウエアに対する深い造詣と独自のデザイン思想とを巧みにブレンドしたコレクションで国内外から広く支持を集め、現在では自身のブランド以外でもディレクションを手掛けるなど、その活動の幅は多岐に渡る。