no7
Sep.24.2019
"格好良い男が更に格好良くなる
そんなデニムブランド"
Photo Tomoaki Shimoyama
Interview & Text Takayasu Yamada (THOUSAND)
ファッションの中で、もっとも定番的とも言えるデニムアイテム。
日常的にファッションスタイルへと取り入れている人も多いのではないか。
この連載企画では、スタイルを持った人物にラングラーを着てもらい取材。
その人ならではの自由なデニムスタイルを知り、普遍的であるデニムアイテムとの付き合い方を改めて考えたい。
7回目となる今回は、TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト. )のデザイナー宮下貴裕さんにインタビュー。
今年1月、パリメンズコレクションにデザイナー宮下貴裕さんが10年ぶりに復帰した。前ブランドであったナンバーナインの2009年AWコレクションをパリで発表したのを最後に、ナンバーナインを離れ、2010年より開始したタカヒロミヤシタザソロイスト. 。国内外で傑出した評価を集める宮下さんがパリコレクションにカムバックするということで注目を集めた今季、実は初となるWranglerとのコラボレーションアイテムも登場しているのである。
今回のコラボレーションでは、デニムシャツを1型製作。そのデニムシャツをまとい宮下さんが当企画に登場してくれた。
宮下さんは日頃からデニムアイテムは着用されますか?
着ますね。僕にはあまり定番的に着るというアイテムはないので、1つのアイテムに限らず、その時々で自分が手掛けてきたものを穿いたり着たりすることが多いです。
ファッションスタイルでルールはありますか?
こう着なければいけないというようなルールが嫌いなので、もちろん拘りはあるのですがルールを気にすることはないです。
ラングラーはこれまでも着用したことがありますか?
もちろんあります。ラングラーはデザイン的にとても優れていて面白くて、飛び抜けているんですよ。あまりにも格好良すぎて、良い意味で着るのも見るのも、見せるのも難しいのがラングラーなのかなと思っています。僕の好きな要素が全て詰まっているから、ジーンズやGジャンをデザインすると、なんだか似てしまいそうになるんですよね。
宮下さんがデニムアイテムのデザインをする上で自然とラングラーに近づくというのは興味深いです。
ジーンズのディテールの外側の股のダブルステッチが嫌いだとか、ブロークンデニムが嫌いだとか言う人も多いんですが、僕はそういうディテールが格好良いと思うことが多い。毎年そうではなく、時代にもよりますし、気分は変わるので他のジーンズが良い時もあるのですが、デザインというくくりで見ると、ラングラー以上のものはない。独特な雰囲気を持っているんです。創造した人が凄いなっていうレベルです。その人の性格が表れていると感じますね。
ファッション業界においての立ち位置が僕に近い気もする。メインストリームにはならないし、コミュニケーション能力に欠けているようなデザインも似ているのではないでしょうか。
今回、2019AWコレクションでラングラーとコラボレーションをしたきっかけは何でしょうか?
襟を真っ赤にして、カジュアルだけど高貴なアイテムを創りたかったんです。複数のブランドとコラボをしているのですが、ラングラーではウエスタンシャツを創らせてもらいました。僕が着たいと思う、僕が好きなものを選んで、創りたくて創ったんです。
ラングラーはこれまでの歴史の中で、様々なミュージシャンにも愛されてきました。音楽好きとしても知られる宮下さん的にそういう着こなしから何か影響を受けたことはありますか?
ジョン・レノンの着方は、常に抜群に格好良いですよね。ラングラーはああいう人たちに似合うものなんです。選ばれた人が似合うんですよ。自分のことを格好良いと思っている人たちが着てきたんです。ラングラーを着て格好良くなるのではなく、格好良い男が更に格好良くなる。最近公開されたタランティーノの映画ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドでも衣装として象徴的に使われていました。あれは明らかにタランティーノが、当時(60年代)のハリウッド映画で格好良く使われていたラングラーに対して尊敬の意味で使ったんでしょうね。格好良いということを分かって使っているんです。例えば、車で例えるとメルセデスなどとは違い、カルマンギア(フォルクスワーゲン)みたいな感じで本当に特別なデザイン。ほかに似た存在がない。だから着るのも照れくさい時があるんですよ。格好良すぎちゃうなあとか。僕は観賞用にも良いものだと思っています。「洋服のデザインはこの程度で良いや」とか「これくらいシンプルな方が格好良いでしょう」って言う人がいっぱいいると思うんですが、僕はそうは思わないので。格好良いんだったらふんだんに盛り付けた方が格好良い訳で。それがラングラーだと思っています。カルマンギアのどこがシンプルだと思います? コッテコテのデザインですよね。僕は世界一素晴らしい車だと思いますよ。
特に好きなアイテムはありますか?
やっぱりウエスタンシャツですかね。ほかにも色々なブランドのウエスタンシャツを持っていますが、どれを着ようか迷ったとき9割方ラングラーになります。その理由は明確にはわからないですが、なぜか手に取ってしまう。そんなブランドなんですよね。ラングラーという言葉の響きやリズムも良いじゃないですか。美しいメロディーが流れている。
これは私物で、いつ何処で買ったのかは覚えていないのですが、ジョン・レノンが描かれています。誰の作品なのか全くわからないんですが、この狂った感じが良いですよね。ラングラーのジーンズの、こういう湾曲している部分が多かったり、フラットじゃない癖のあるところが好きな理由の1つです。それにしてもどうしてこういうものを創ろうと思ったのか。迷走しながら創ったんだろうなと思いますし、そういうところも僕に近いなと思えるんですよね。
TAKAHIROMIYASHITATheSoloist. × Wrangler
Western Denim Shirt ¥29,900
NUMBER (N)INEの創業デザイナーを経て、2010年よりTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.を開始。
Instagram @tkhrthesoloistmyst