my denim style is ...

no11

Tomohiro Konno

June 1.2020

"計算された秀逸なバランスと
アジのある経年変化を楽しむ"

Photo  Hidetoshi Narita
Interview & Text  Takayasu Yamada (THOUSAND)

ファッションの中で、最も定番的と言えるデニムアイテム。
日常的にファッションスタイルに取り入れている人も多いのではないか。
この連載企画では、スタイルを持った自分にラングラーを着てもらい取材。
その人ならではの自由なデニムスタイルを知り、デニムアイテムとの付き合い方を改めて考えたい。
今回は、NEXUSⅦ.のデザイナー今野智弘さんが自身の愛用するラングラーを紹介。

業界きってのヴィンテージ好きとしても知られる今野智弘さん。自信が手がけるブランド、NEXUSⅦ.のデザインでもヴィンテージの服から学ぶことはとても多いという。そんな今野さんのヴィンテージコレクションの中でも、特別な逸品であるというラングラーのジャケットを紹介する。

このジャケットについて教えてください。

ヴィンテージマニアの中では、幻のジャケットと言われている66MJZです。
ロデオ大会のレフェリー用に作ったんじゃないかと言われていて、チャンピオン用に作られた赤の12MJZやサックスブルーの22MJZ、ベージュの33MJZと種類がある中で、このブラックは66MJZという珍しいジャケットなんです。
憧れのモデルとしてずっと探していた中、10年前くらいにこれを持っていた友人から譲ってもらったんです。ラングラーのヴィンテージはタイトなサイズが多い中、若干オーバーに着れるサイズ42もかなり珍しいと思います。

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このジャケットに惹かれた理由はなんですか?

存在自体は、昔、Boonなどの雑誌で読んだ情報で、刺繍が入った赤のチャンピオンジャケットがナンバー1なんだって思っていたんですが、そこから探しているうちに実は幻の黒が存在することを知ったんです。
この形自体がすごく好きで、実際に着てみると、着丈のバランスやハンドポケットも使いやすく、復刻もしていて人気になっているように、すごく着やすいジャケットなんです。
現代の復刻は技術がある分、物持ちが良いけれど、これは1950年代のもので、今よりも技術が発達していない分、染色だったり縫製にアジが出る。ステッチも現代の強度なコアスパンと違い、綿糸で縫製されていることで、ダブルステッチの部分も両側で痩せ方が違ったり、所々糸が切れていたり。自分はそういう部分が好きですね。

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当時、レフェリー用に作ったモノが、約70年経った今でもデザインとして優れているというのがすごいですよね。

いろんなGジャンを見てきたけれど、ラングラーのこの形が秀逸だなと思いました。
ボタンではなくジップというのも良いですね。ジップのジャケットって意外と難しくて、丈があと1,2cm短いとバランスがまた違って見えてきたり、ボタンと違って丈が短いと合わせ辛くなる。そういう細かいところまで考えられているんです。
また、ラングラーで1つ思い出があって。アメリカ最古の木版で刷る「ハッチ・ショー・プリント」というお店がアメリカの(テネシー州)ナッシュビルにあり、NEXUSⅦ.のポスターを作るために飛行機を乗り継いて行ったことがあります。数日滞在したんですが、そこはカントリーな街で、古着屋とかスリフトのお店にラングラーのバナーやアイテムが誇らしげに飾ってあったことが印象的でした。最近だと映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でブラッド・ピットが着ていたり、アメリカでは文化的にラングラーが直結している感じがしますよね。

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これを着る時はどういうコーディネートをすることが多いですか?

褪色していることが伝わるように中に白を合わせたり。50年代の感じを出すためにピンクを入れたりすることが多いですね。ヴィンテージ用語では、黒にピンクで黒ピンとか、グレーにピンクでグレピンと言われますが、50年代の象徴的なカラーを表すことに学生時代は憧れていました。僕たちよりも上の世代が、50年代の黒ピンのアロハシャツを大事に着ていたりしてカッコイイなと思っていましたね。でも自分は、ロカビリーの分かりやすいリーゼントみたいなスタイルではなかったから、自分なりに崩して、カラーリングだけを取り込んだりしていました。そのおかげで、今でもピンクが好きでNEXUSⅦ.でもよく使用するんだと思います。

現行のアイテムに関しては今野さんどう見ますか?

見た目の良さを重視したスタイリッシュなバランスがラングラーの魅力だと思っていて、形そのものがブランドの象徴であるから、生地を現代的に置き換えた今のモノも良いと思います。
でも僕は、着込んでボロボロになったものが好きですね。高校生の時も、色落ちをさせるために、制服の中にいつもGジャンを着ていました。
最近、新型コロナウイルスの影響もあって、長く使えるモノ、経年変化を楽しめるモノに対してより魅力に感じられるようになりました。自分のブランドでも型数を半分以上に減らして、必需品である洋服の要素を追求していったんです。リペアをして長く持つモノとか長く楽しめるモノ。こういうヴィンテージも、前の人が大事にしてきたから、こうやって自分の手に渡っているからであって、ラングラーのように受け継がれていく服をこれからはより意識していきたいと思っています。

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profile photo

Tomohiro Konnno (NEXUSⅦ. Designer)

2001年からブランドNEXUSⅦ.を手がけるファッションデザイナー。ヴィンテージへの造詣が深く、知識から裏付けされた細やかな拘りを服作りに込める。
Instagram @nexus7konno @nexusvii.official

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